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退職金に関する厚生労働省の就労条件総合調査<7>

100人未満の中小企業では"中核的社員"の定年退職金が1000万円以上だったが、それも過去の話になりつつある

総務部長 それで、退職金の相場はいくらぐらいでしょうか? 永年勤続の場合で、いくらですか?

北見 厚生労働省の「就労条件総合調査」の資料を過去に遡って丹念に読んでみました。ここから解説するのは「退職一時金のみの会社」の金額です。

総務部長 社員30人以上100人未満の会社の高卒現業職の金額がぶれていますね。随分マチマチといいますか、デコボコではないですか?

北見 そうですね。まったくデコボコしています。これは調査できたサンプル数が少ないため、データが安定しないせいだと北見昌朗は推察します。つまり「30人以上100人未満」の中小企業では、そのような永年勤続の定年退職者はもともとごく少数だからです。

総務部長 それにしても、やはり案外高いのですね。「30人以上100人未満」の中小企業でも、平成20年の調査では、大卒の35年以上勤務の場合で1881万円、高卒現業職の35年以上勤務の場合で1274万円になっています。

北見 確かに高い金額ですね。でも、その「平成20年の調査」のデータを更に詳細に突っ込んでチェックしてみましょう。すると、次のような人材だとわかります。

大卒の場合は、定年退職時に所定内賃金が45万円もらっていた人で、その定年退職金が1881万円になりました。42カ月分です。

高卒の場合は、定年退職時に所定内賃金が35万円もらっていた人で、その定年退職金が1274万円になりました。37カ月分です。

この金額を聞いて、何を感じますか?

総務部長 大卒で45万円の賃金ですか、うちならば課長や部長の賃金に匹敵しますね。

北見 そうですね。「ズバリ! 実在賃金」の平成22年の首都圏版(東京都+千葉県+埼玉県+神奈川県)の賃金のデータによりますと、「50歳 管理職」の賃金の総額は次のようになっています。

  上55万円 中48万円 下42万円

このように考えますと、定年退職時に「45万円もらっていた大卒社員」というのは、おそらく管理職だとイメージできます。だから、この1881万円という退職金は「貢献度の大きかった管理職に対するもの」であると考えられます。

総務部長 高卒の場合は、どんな人のイメージですか?

北見 「高卒で、定年退職時に所定内賃金が35万円もらっていた人」というのがポイントです。
前述の「ズバリ! 実在賃金」の平成22年の首都圏版(東京都+千葉県+埼玉県+神奈川県)の賃金のデータによりますと、「50歳 男性 一般社員」の所定内の賃金は次のようになっています。

  上39万円 中32万円 下25万円

ここから考えると、「35万円の人」というのは、「一般社員の中でも上の人」とイメージすることができます。職位でいえば係長クラスです。管理職にこそなれなかったものの、現場のリーダー的存在で定年まで勤め上げた人です。

総務部長 おそらく真面目な人でしょうね。

北見 そうですね。イメージとしては、本当にコツコツ働く真面目な勤め人だと思います。

総務部長 イマドキは、そんな人は珍しくなっているでしょうね。

北見 そうでしょうね。その珍しい人物の退職金が1274万円だったということです。

総務部長 でも、これからは低金利の時代、そんな額の退職金はこれから払えないのでは?

北見 そうですね。中小企業退職金共済はバブル時代は6%以上の金利が付いていました。その恩恵を受けた世代の話、つまり過去の話になりつつあるでしょう。昔の良い時代の話ですから、これからの退職金の制度を議論する場合には、役立たないデータだと思います。

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